2026年度(令和8年度)中に、不登校児童生徒への支援でICT活用を100%の学校で整備するという方針が示されました。
- 自宅でのオンライン学習
- デジタル教材活用
- 遠隔授業参加
などを通じて、学習機会を確保する体制を全国的に整えるというものです。
背景には、不登校児童生徒数の増加があります。
「ICT活用100%」目標の内容(概要)
単に「パソコンを配る」段階から、「毎日、当たり前に、最大限に使いこなす」という質的な向上を目指しています。2026年度を一つの大きな節目として、いくつかの項目で「100%」という具体的な数値を掲げています。
学習活動における活用頻度の100%化
授業での端末利用を「特別なこと」から「日常」に変える目標です。
- ほぼ毎日活用: 小学校・中学校のすべての学校で、端末を授業で「ほぼ毎日」活用する割合を100%にする(2026年度目標)。
- 個別最適な学び: 子ども一人ひとりの習熟度や特性に合わせたドリル学習や、自分なりの表現活動に活用することを日常化させます。
特別な配慮が必要な子への支援100%
ICTが持つ「バリアフリー」な側面を最大限に活かし、誰一人取り残さない教育を目指しています。
- 不登校児童生徒への支援:自宅等からオンラインで授業に参加したり、学習状況を共有したりするためにICTを活用する学校を100%にする。
- 特別な支援・外国人児童生徒: 読み書きの補助(音声読み上げ等)や多言語翻訳など、個別のニーズに応じた支援にICTを使う体制を100%整える。
教職員の指導力と校務のデジタル化
教える側である先生たちのスキル向上と、働き方改革もセットになっています。
- 指導力の向上: すべての教師が「ICTを活用して授業を組み立てる能力」を身につけている状態(100%)を目指します。
- 校務DX: 出欠管理、成績処理、保護者への連絡などをデジタル化し、ハンコや紙の文化をなくすことで、教師が子供と向き合う時間を確保します。
インフラ環境の整備(NEXT GIGA)
端末の更新やネットワークの強化が進められています。
- 端末の更新: 2024年度から始まった端末の更新期に合わせ、都道府県単位での共同調達などにより、安定して「1人1台」が維持される仕組みを作っています。
- 通信環境の改善: 「つながらない」「遅い」を解消するため、すべての学校でネットワークのアセスメント(点検)を行い、高速な通信環境を確保します。
出席扱いに認められるための要件
文科省が定めている主なルールは以下の通りです。
- 保護者と学校の連携: 保護者と学校(担任など)の間で、オンライン学習を行うことについて十分な協力・連携関係があること。
- ICTの活用: パソコン、タブレット、インターネットなどの情報通信技術を活用した学習であること。
- 対面または双方向性: 先生や指導者と対面でやり取りができる、もしくは学習履歴を先生が確認できるようなシステム(スタディサプリやすらら等)を利用していること。
- 適切な学習内容: 学習の内容が、学校の教科書やカリキュラムに基づいた適切なものであること。
- 校長の判断: 最終的に「出席」として認めるかどうかは、学校の校長先生が判断します。
- 別室登校や施設利用との併用: 学校外の公的な支援センター(適応指導教室など)に通えない場合に、自宅での学習が認められるケースが多いです。
- 計画的な評価: 定期的に学習状況を学校へ報告し、先生がそれを評価できる仕組みがあること。
この制度の目的は、単に「欠席日数を減らすこと」ではなく、「学びの継続」と「社会的な自立」を支援することにあります。
ICT活用100%の主なメリット
ICTを「文房具」として使いこなすことで、従来の「一斉授業」では難しかった学びが可能になります。
- 個別最適な学びの実現:AIドリルなどを活用することで、子どもの理解度に合わせて問題の難易度が自動調整され、自分のペースで学習を進められます。
- 情報リテラシーの向上: 日常的にデバイスに触れることで、情報の検索、真偽の判断、資料作成、プレゼンテーション能力といった、将来の仕事で必須となるスキルが自然に身に付きます。
- 多様な学び方の保障:不登校の生徒や身体的な制約がある子どもでも、オンラインを通じて授業に参加したり、音声読み上げ機能などで学習を補ったりすることが容易になります。
- 先生の負担軽減(中長期):自動採点や校務のデジタル化が進むことで、先生が事務作業に追われる時間を減らし、子ども一人ひとりと向き合う時間を増やせます。
ICT活用100%の主なデメリット・懸念点
一方で、急速な導入による副作用や、環境整備の格差といった課題も指摘されています。
- 健康面への影響: 長時間の画面視聴による視力低下(近視の進行)や、姿勢の悪化、運動不足などが懸念されています。
- 「家庭環境」による格差: 学校では1人1台あっても、家庭でのWi-Fi環境や保護者のサポート体制の差が、学習の質の差(デジタル・デバイド)につながるリスクがあります。
- ネットトラブルのリスク: SNSを通じたトラブル、ネットいじめ、有害サイトへのアクセス、依存症的な利用など、安全管理とリテラシー教育が追いつかない可能性があります。
- 教員の指導力のバラつき: デジタルツールを使いこなせる先生と、そうでない先生の間で、授業の質に差が出てしまう「教育格差」が生まれる懸念があります。
「出席扱い=解決」ではない
出席扱いになることは、進学上の不利軽減や学習評価の保障につながります。
しかし、不登校の背景には複雑な要素があります。
- いじめ
- 発達特性
- 家庭環境
- 精神的要因
ICTは手段であって、根本解決ではありません。
ICT活用100%目標で世の中はどう変わっていくのか
ICTはあくまで「手段」であり、それ自体が教育の質を決めるわけではありません。
100%活用を目指す中で、デジタルとアナログ(紙への書き込みや対面での議論)のバランスをどう取っていくかが、今後の教育の大きなテーマとなります。
デジタル教科書の本格導入・活用拡大(2024年度〜英語、2026年度〜算数・数学等)があり、ICTを使わないと授業自体が成立しない環境へとシフトしています。
これまで「たまに使う便利な道具」だったタブレットが、これからは「鉛筆やノートと同じ、なくてはならない文房具」になる、というのが文科省の描く「100%」の姿でしょう。
