日常の水分補給として欠かせない「麦茶」。
スーパーに行けば1本60円前後の格安PB(プライベートブランド)が並ぶ一方で、2026年4月に登場したヒカキン氏プロデュースの麦茶「ONICHA(オニチャ)」は149円という強気な価格設定で話題となっています。
「麦茶なんてどれも同じじゃないの?」
「なぜこんなに価格差があるのか?」
今回は、麦茶の知られざるコスト構造と、価格差の正体についてまとめました。
麦茶が緑茶より安くて味が安定している理由
麦茶が緑茶や紅茶に比べて安価で、かつ味にバラつきが少ないのには、原料である「大麦」の特性が関係しています。
- 原料コストの圧倒的な差: 緑茶は繊細な「茶葉」を原料としますが、麦茶は「大麦」という穀物です。大麦は世界中で大規模栽培されているコモディティ(汎用品)であり、茶葉に比べて仕入れ価格が圧倒的に安く抑えられます。
- 製造工程のシンプルさ: 茶葉は「蒸す・揉む・乾燥させる」といった複雑な工程が必要ですが、麦茶は「焙煎して抽出する」というシンプルな工程で、大規模な自動化ラインでの生産に適しています。
- 劣化しにくい「香ばしさ」: 緑茶は酸化による色や味の劣化が激しいですが、麦茶の魅力は焙煎による「焦げの香ばしさ」です。この香りは時間が経っても変化を感じにくいため、長期間安定した品質を保つことができます。
原料差より、容器・物流・価格戦略のほうが大きいため、同メーカーの緑茶と麦茶が同価格で販売されることも多いです。
「品質面の参入障壁は緑茶より低い」が、「その代わりブランド勝負・販売力勝負になりやすい」のが麦茶の市場と言えるでしょう。
麦茶は「味の差が出にくいからこそ、知名度の差がそのまま売上の差に直結する」という、インフルエンサーにとって最も効率の良いブルーオーシャンだったと言えるかもしれません。
国産大麦は本当に高いのか?
国産大麦は海外産より明らかに高く、条件によっては2倍前後の差が出ることもあります。
日本の狭い農地で手間をかけて育てる国産大麦は、どうしてもコストが上がります。しかし、ペットボトル1本当たりの原価に占める「中身の原料代」は数円程度。
そのため、国産大麦を使ったからといって、それだけで販売価格が100円も跳ね上がるわけではありません。高価格帯の商品は、原料以外の部分(製法やブランド)にコストがかかっているケースがほとんどです。
プライベートブランド(PB)が低価格で売れる仕組み
スーパーで50円〜60円台で売られているPB商品。これらは徹底した「引き算」の戦略で成り立っています。
- 広告費ゼロ: CMなどの莫大な宣伝費をかけず、店頭に置くだけで売れる仕組み。
- 物流と製造の共通化: ボトルやキャップ、段ボールを他製品と共通化し、巨大な工場で24時間体制で大量生産することで、1本当たりの製造単価を極限まで下げています。
安く麦茶を飲みたいのであれば、PBの麦茶を選択するのが賢いと言えるでしょう。
パック式の麦茶を自分で作れば、激安PB商品と比べても「10分の1以下」、ブランド飲料と比べると「40分の1以下」のコストで済みます。ただし、手間や賞味期限などのデメリットは生じます。
ヒカキン氏の「ONICHA(税込み149円)」が高い理由
海外産大麦を使用しながら、なぜPBの約3倍、ナショナルブランドの約2倍近い価格設定になっているのでしょうか。
- 「ビタミンC」不使用のこだわり: ONICHAは酸化防止剤(ビタミンC)やエキスを使わず、六条大麦と二条大麦だけで仕上げた点を特徴にしています。この“余計なものを足さない設計”も、付加価値の一つになっています。
- エンタメ要素の追加: ラベルの裏に「おみくじ」を付ける、キャラクターデザインを複数用意するなど、通常の飲料にはない「遊びのコスト」が乗っています。
- コンビニ流通と宣伝費: 定価販売が基本のコンビニ専売であることや、莫大なプロモーション費用が価格に反映されています。
ヒカキンさんは動画で、「当初から国産を模索したが、全国展開する膨大な本数を通年で安定して確保するのが難しく、味のブレが少ない海外産を選んだ」と釈明しています。
▶ヒカキンの麦茶「ONICHA」は普通の麦茶と何が違う?炎上マーケティングとの批判も
他社との価格比較(2026年4月15日時点)
実際の市場価格(イオンネットスーパー参照)を比較すると、麦茶がいかに「日常品」から「嗜好品」まで幅広い価格帯を持っているかがわかります。
| 商品名 | 容量 | 価格(税込) | 備考 |
| トップバリュベストプライス | 525ml | 62円 | 圧倒的コスパのPB |
| 伊藤園 健康ミネラルむぎ茶 | 650ml | 84円 | 王道のナショナルブランド、ミネラルバランスを整えている |
| サントリーフーズ グリーンダカラ やさしい麦茶 | 680ml | 84円 | 大容量でコスパ良好 |
| トップバリュ fun fun smile 赤ちゃんの麦茶 | 500ml | 95円 | ベビー用としての付加価値、国産六条大麦使用 |
| 和光堂 ベビーのじかん 1歳からのむぎ茶 | 500ml | 149円 | 国産大麦100%使用のこだわり、乳化剤不使用、無菌充填 |
| BEE ONICHA(ヒカキン) | 600ml | 149円 | エンタメ・無添加の付加価値 |
和光堂の「ベビーのじかん」は国産大麦100%使用に加え、赤ちゃん基準の厳しい品質管理が行われているため、ONICHAと同等の高価格帯となっていると考えられます。
スギ薬局のPBの麦茶に注目

スギ薬局で販売しているPB、エスセレクトの麦茶は製造所がチェリオコーポレーションになっています。ONICHAの製造所もチェリオと言われているため、一つの判断指標としても良さそうです。
エスセレクト麦茶:容量600ml 税込み価格73円
原材料はカナダ産の大麦と記載されています。
ヒカキンさんの麦茶はファングッズ寄りの製品と考える
こうして比較してみると、麦茶の選び方は「水分補給としての実利」を取るか、「体験としての価値」を取るかに二分されます。
1本60円のPB麦茶は、喉を潤すための完璧な「インフラ」です。対して、149円の「ONICHA」は、単なる麦茶を買うというよりは、「ヒカキンさんというコンテンツを楽しむための入場券(ファングッズ)」を買うという感覚に近いでしょう。
「今日は喉が渇いたからPB」
「今日は子供とヒカキンさんのおみくじで遊びたいからONICHA」
そんな風に、その日の「目的」に合わせて選べるようになったのが、今の麦茶市場の面白さと言えるかもしれません。
